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高松高等裁判所 昭和58年(行ケ)4号 判決

原告

吉岡勝

被告

徳島県選挙管理委員会

右代表者委員長

山本武男

右指定代理人

木村義則

外四名

主文

原告の請求を棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

事実

第一  申立

(原告)

被告が昭和五八年四月二四日執行の東祖谷山村議会議員一般選挙における当選の効力に関する原告の審査請求に対してなした裁決はこれを取消す。

(被告)

主文と同旨

第二  主張

(原告の請求原因)

一  原告は昭和五八年四月二四日に執行された徳島県三好郡東祖谷山村議会議員一般選挙(以下、本件選挙という。)の選挙人であるとともにその立候補者である。

二  右選挙につき即日開票の結果、選挙会は同日、立候補者の訴外長岡博が一七三票を得た者として当選を決定し、原告が一〇二票を得た者として落選と決定し、その後、その旨告示した。

そこで、原告は同年五月一一日東祖谷山村選挙管理委員会(以下、村選管という。)に対して異議の申立を行つたところ、同選管は同年同月三〇日、右申立却下の決定をなし、そのころ右決定書が原告に送達された。そこで、原告は同年六月七日、被告に対し審査申立を行つたが、被告は同年一一月二五日、選挙の効力に関する申立につき却下の裁決、当選の効力に関する申立につき棄却の裁決を行つた。

三  しかし、本件選挙の右当選の効力に関する被告の裁決は、公職選挙法(以下、公選法という。)の規定に違反し、かつ選挙の結果に異動を及ぼすことが明らかである。

1 訴外長岡博の得票とされた前記一七三票のうち、単に「長岡」ないし「ながおか」と姓のみ記載した投票九九票が含まれているところ、右九九票は、次の理由により、長岡博の爾余の得票数七四票と原告の得票数一〇二票とで按分すべきものである。

2 すなわち、原告は昭和四年一〇月二五日出生の日から昭和一五年八月二二日までその姓が長岡であつたもので、その後、父孫三の認知に伴ない吉岡と改姓したが、その後の昭和一九年三月、東祖谷村落合小学校高等科を卒業するまで、担任教師、学校友達、知人らはすべて旧姓の長岡で原告を呼び慣れていたため、その後、本件選挙の投票当時ころを含めて現在に至るまで、右小学校時代の同級同窓生や在学時から同じ校区の住民で原告と交際がある人は、すべて原告を長岡と呼んでいるので、本件選挙当時、長岡は原告の通称であつたとみるべきであるから、公選法六八条の二の規定が適用される場合に該当する。

3 原告は、本件選挙で立候補届出手続を行つた際、通称使用申請書を立候補届書とともに村選管に提出し、受理され、その後、村選管から右通称使用申請の受理を撤回する旨の告知を受けたことはない。

4 公選法六八条の二にしたがい、前記長岡ないし「ながおか」という姓のみが記載された投票受九九票を、長岡博の爾余の得票七四票と原告の得票一〇二票で按分した結果は、原告の得票が159.375票となり、訴外長岡博の得票は115.625票となり、本件選挙の当選の効力に移動を生ずることが明らかである。

四  よつて、原告申立の判決を求める。

(請求原因に対する被告の認否と主張)

一  請求原因一、二の事実及び請求原因三の事実のうち訴外長岡博候補の得票数一七三票のうち、長岡ないし「ながおか」という姓のみを記載した投票数九九票が含まれていることは認めるが、請求原因三のうち、長岡ないし「ながおか」が原告の通称であるとの主張及び村選管が原告の通称使用申請を受理したとの主張を否認する。

二  本件選挙において、長岡ないし「ながおか」という姓のみ記載された投票九九票につき公選法六八条のこの規定が適用される余地はない。

(一) 公選法六八条の二の規定は、例外を定めた規定であること、また投票の効力を擬制した規定であることの理由から、同条の規定は厳格な解釈を要しその適用範囲をみだりに拡張すべきではない。

1 すなわち同条は同一の氏名等の候補者に対する投票を本来ならば同法六八条、一項、七号の規定により無効としなければならないものにもかかわらず、立法政策上有効化しようとする特異な例外的な場合を定めたものであり、その結果は必ずしも選挙人の真意に合致するとは断定しがたいものであるから、その適用範囲をみだりに拡張すべきでない。それは投票の記載が二名以上の候補者の氏名、氏、または名(あるいは少なくとも選挙人一般に対し氏名と同等の通用力の認められる通称)に合致する記載であるということだけでその投票を候補者のいずれに帰属せしむべきか判定不能の場合について適用すべく、候補者の何人を記載したか確認しがたい原因が候補者氏名の誤記の疑や候補者の旧名記載の可能性いかんによる場合にまでその適用を拡張すべきでない。

2 また、同一の氏名等の候補者に対する投票は開票区ごとにその他の有効投票数に応じて按分し加算する方法が採られている。これは、もとより法の擬制であり、このような擬制による投票の帰属は、法の明文に反して、もしくは明文を無視して軽々しく行われてはならない。同一の氏名等の候補者に対する投票が同法六八条の二の規定が適用されるには、旧名記載の可能性の疑もなく、しかもその投票が一方ではある候補者を指していると同時に他面他の候補者を指しているものと認められる如き場合、換言すればこれらの候補者の何れについても、これら候補者に対して投票されたものであるとの蓋然性が強度であり、かつその蓋然性の程度が均衡する場命に限り、この規定が適用されるものである。

従つて、戸籍上の氏名、氏又は名の競合は何らその通用力を検討するまでもなく同条の規定が適用され按分されるが、戸籍上の氏名、氏又は名と呼称とが競合する場合には、その呼称の通用力がその候補者の氏名と同程度であるときに限つてのみ、同条の規定による按分がなされるものである。

(二) 長岡は原告の通称でない。

1 原告は昭和四年一〇月二五日に出生し、母長岡ミヤノの長男として入籍されたが昭和一五年八月二二日父吉岡孫三の認知届出により吉岡勝となつた。また原告の母兄弟姉妹もすべて同時期に吉岡となつた。以来四〇年以上現在まで吉岡の姓で、原告の妻及び子供三人とも婚姻又は出生以来すべて吉岡の姓で社会生活を営んでいる。

2 原告が戸籍上長岡勝となつていたのは出生から一一年間にすぎず、それも両親の家庭の事情からであつて、生活の実態は鍛冶屋を営んでいた吉岡の家で父上野孫三母長岡ミヤノの長男として成長し、現在も引き続き同家で生活している。

3 被告の原告に対する審尋において、原告はここ二、三年の間で郵便物、領収書等に長岡の姓を用いたことがないこと、さらに原告が長岡勝又は長岡と呼ばれていることを証する資料がないと供述した(乙二号証)。

4 原告は本件選挙における選挙運動用ボスター、選挙運動用通常葉書等のいわゆる文書図画による選挙運動には長岡の姓を全く使つていない。

5 本件選挙の開票において原告届出の選挙立会人をはじめ一〇人全員が、「長岡」及び「ながおか」の投票を訴外長岡博候補の有効とすることに同意し、按分を主張した者がなかつた。

6 本件選挙において「長岡勝」と記載された投票が一票もなかつた。

右1ないし6の理由から、長岡が原告の呼称として東祖谷山村内の選挙人一般に対し氏名と同等の通用力を有しているとは言えない。

なお、本件訴訟で原告申請の証人の多くが、「原告を長岡と呼んでいる」、「呼ばれている」と供述しているが、なんら客観的資料を提示せず、また合理的説明もないため、これら供述は信用することができない。

(三) 原告はかつて村の青年団や消防団の役員を歴任し、さらには村議会議員選挙に地区の推薦を得て立候補するような情況の下で、幼年時代の旧名による呼び分けの必要は全くなく、むしろ今日公式の場において幼年時代の旧名を呼ぶとかえつて原告を軽んずる響を与える懸念がある。

また、村議会議員の選挙という公式の場においては、通常選挙人は投票所内に掲示された候補者の氏名等掲示を見て投票用紙に候補者を記載するものであり、本件選挙のように四〇年以上も前の旧姓と同一の氏を有する他の候補者がある場合において、その旧姓を覚えている者は小学校当時の同窓生等で年齢は五〇歳から六〇歳であり選挙人を特定して投票するに十分な弁識能力を有し、あえて旧姓を記載しなければならない特段の理由がない。

(四) 仮に、原告主張のように、原告が長岡と日常の会話や電話等で呼ばれているとしても、その呼称は原告の小学校時代の同窓生等ごく限られた範囲と機会における呼び方の域を出ないものである。しかるに原告主張のように単に「長岡」、「ながおか」と記載された投票九九票を原告と訴外長岡博に按分するならば、原告はこの九九票のうち57.375票。一方訴外長岡博候補はこの九九票のうち41.625票を得ることになり、戸籍制度上個人を特定する標識として国家に承認せられ、また自由な変更を許されず、公益的色彩を帯びており、さらに公職選挙法において投票は候補者の氏名を記載するものとされているにもかかわらず、訴外長岡博候補は半分に満たないわずか四二パーセントしか按分されないこととなり、不合理な結果をまねくことが明らかである。

三  原告の通称使用申請書について

原告は公職選挙法施行令八八条、六項の規定に基づき通称使用申請書を提出し受理されたと主張するが、そもそも同条項に規定する通称使用申請書は立候補届出の告示、新聞広告、投票所内の氏名等の掲示等に戸籍簿に記載された氏名(以下本名という。)に代えて本名以外の呼称で本名に代るものとしてひろく通用しているものが記載され、又は使用されることを求めようとするときに、選挙長に申請するものであつて、選挙長がそれを認定したときは同条七項により認定書を交付しなければならないものである。

本件選挙の場合、選挙長は申請に係る呼称すなわち「長岡勝」が原告の本名に代るものとして広く東祖谷山村に通用していると確認できず、従つて認定書も交付しなかつた。

なお、通称の認定基準は、「立候補届出に際して提出する各種の資料等からみて、当該選挙の行われる区域の全域にわたつて、戸籍簿に記載された当該候補者の氏名(本名)が当該候補者を指称するものとしてはほとんど使用されておらず、その本名に代わつてその申請にかかる呼称がひろく使用されていると認められる場合に限り、当該呼称を通称として認定すべきである」(昭三九・一〇・二三自治選第四九号各都道府県選管委員長あて自治省選挙課長通知)。従つて、本件選挙で原告からの通称使用申請に対し選挙長が認定しなかつたのは、適正な処理である。

第三  〈証拠関係省略〉

理由

一請求原因一、二の事実および請求原因三の事実のうち、本件選挙の選挙会が訴外長岡博候補の得票数と決定した一七三票のうち、長岡ないし「ながおか」という姓のみを記載した投票数九九票が含まれていることは当事者間に争いがない。〈証拠〉によると、本件選挙の最下位当選者の得票数は一一二票で、原告の得票数は一〇二票でその差は一〇票であつたことが認められる。

二そこで、本件選挙当時、長岡ないし「ながおか」という呼称が原告の通称であつたか否かにつき検討する。

(一)  〈証拠〉を総合すると、次の事実が認められる。

1  原告は父孫三、母ミヤノ間の長男として昭和四年一〇月二五日、肩書現住所で生まれた。孫三(明治二六年一一月生)は吉岡浅太郎、同マサ夫婦の二男で東祖谷山村字落合一四〇番地で生まれたが、大正二年八月一六日同村同字二四一番地上野孫市、同人妻ゲンと養子縁組届出をなし、同家へ婿入りしたが、間もなく、つれ合いと死別し、遅くとも大正一二年一〇月ころまでに、同村同字六五八番地で長岡ミヤノ(明治三七年一月生)と同棲を始め、ミヤノとの間に大正一三年八月から昭和二四年四月までに原告を含めて、三男七女を儲けた。孫三は前記養父母と協議離縁し昭和一五年六月二二日にその届出を行ない上野姓から吉岡姓へ復帰し、同年七月四日、戸主(兄)吉岡傅右エ門からの分家届を行ない、同年九月二日、長岡ミヤノとの婚姻届出を行つた。孫三はミヤノと同棲したころから住所で鍛冶屋を営んでいた。

2  原告は父母孫三、ミヤノが婚姻する一〇日前の昭和一五年八月二二日、孫三の認知届出により孫三の戸籍に入り、それ以降吉岡姓となつたが、それまでは母の兄で戸主の長岡勘次郎の戸籍に入つていたので長岡姓であつた。

3  孫三の父浅太郎は、落合六五八番地の孫三宅に同居し孫三の鍛冶屋を手伝つていたので、昭和一五年ころまでは、孫三宅には、家人の表礼として上野孫三のほか、吉岡浅太郎、長岡ミヤノ、長岡勝(原告)、長岡ミエコ(長女)、長岡ユリコ(二女)、長岡アヤ子(三女)、長岡ツヤ子(四女)、長岡マチ子(五女)、長岡操(二男)の各表礼が掲げられていた。

原告以外の右子女六人は原告と同じ日に孫三の認知届により長岡姓から吉岡姓になつた。そのうちミエコ(大正一三年八月生)はその後、同村字久保西の長岡家へ養女に入り、再び長岡姓となつた。孫三、ミヤノが婚姻後に二人の間に生まれた一男二女は吉岡姓であり、長岡姓を名乗つたことはない。

4  昭和四年一〇月二五日生れの原告は昭和一一年四月、地元の東祖谷山村立落合小学校へ入学し、同一九年三月同校高等科二年を卒業した。同村の小学校区は四校区で、落合小学校が最も規模が大きいが、原告の小学校時代の同級生の員数は、一学年から六学年間を通じて約三五人、高等科一、二年間は、その約半数であり、本件選挙当時は二〇名余りが在村者であつた。

原告の姓が長岡から吉岡と変つた昭和一五年八月以後小学校を卒業する同一九年三月ころまでは、原告の同級生や一、二年の上級、下級生のうち親しい友人らは、原告を呼称するのに、長岡姓を使う場合が多かつた。

5  原告は、昭和一九年一二月海軍へ入隊したが、その出征の挨拶等はもとより吉岡姓で行ない、その後、除隊帰村以降、東祖谷山村の青年団や消防団の役員をつとめるなどしたがすべて吉岡姓を使い、原告の方から私的な交際の場等でも長岡姓を使つたことはなかつたが、小学校時代の同級生や一、二年先後の親友らの中には、本件選挙当時でも、原告を長岡の姓で呼称する者があつた。それ以外には、昭和五七年ころまでには原告の地元住民らの懇親会の席等でも原告を長岡の姓で呼称する事例はみられないようになつていた。

以上のとおり認められる。〈証拠〉中、本件選挙当時における原告の長岡ないし「ながおか」という呼称での知名度が吉岡姓以上ないし五分五分に近いものであつたという部分は、原告の戸籍上の氏名が長岡勝であつた時代が選挙時より四二年以上も前で原告が一一歳までの約一一年間であつたことに徴しかつ爾余の前記証拠と比較して、また本件選挙の投票中、長岡ないし「ながおか」という投票が九九票あつたのに、長岡勝ないし「ながおかまさる」という投票は皆無であつたこと(この点は原告の明らかに争わないところである。)に徴して採用できず、他に右認定を動かすべき証拠はない。

(二) 右認定事実によると、長岡ないし「ながおか」という呼称が本件選挙当時、主として小学生のころ原告と同級生であつた人を中心に一部の選挙人の間で原告の呼び名として通用していたものといえる。

(三) 公選法六八条の二の規定の趣旨は、選挙人の意思を推定して、その投票をなるべく有効としようとするものであり、また通称を記載した投票を有効とする以上、通称についても同条の適用があるものと解するのが相当である(最高裁判所第二小法廷昭和三六年一一月一〇日判決民集一五巻一〇号二四八〇頁)し、また他の候補者の戸籍簿に記載された氏と同一の通称を有する候補者がある場合にも、同条の適用があると解される(最高裁判所第二小法廷昭和四六年六月四日判決民集二五巻四号四七八頁)が、その通称を記載した可能性があると認められる場合すべてに同条の適用を認めるのは相当でなく、その通称の通用度がかなり高度でどちらへの投票であるか判定できない場合に限るべきであるところ、知名度が余り高くない本件の場合に当該候補者に按分票を加算して当落に影響する結果を招来するのは他の候補者と比較し明らかに不公平、不合理であるといわなければならない。その通称の通用度が選挙区全般に公知であるほどの高度である必要はないとしても、少なくとも選挙人一般に対して戸籍上の氏名と同等程度ないしそれと比肩できる通用力がある場合に限り同条の適用があると解するのが相当であり、これを本件についてみると、原告の場合、長岡ないし「ながおか」という呼称の通用の程度は、戸籍上の氏名の通用力と比較して、相当に低かつたとみざるを得ないから、同条を適用するに由ないといわなければならない。

前記(一)で認定した事実によると、一部の選挙人の中には原告を長岡という呼び名で呼んでいたもののあることが認められるので長岡ないし「ながおか」と書いた投票の中には原告のために投票したもののあることを全く否定することはできないが、その数を把握することは全くできず、その数が最下位当選者と原告の得票数の差一〇票を超えるまで原告と長岡博の正確な投票数で按分せねばならぬ程多数に達したであろうと想定することはできない点でも、選挙会がこの投票を長岡博への投票に算入したことを違法とみることはできない。人間の意思はその表示行為によつて判定するほかなく、原告の長岡という通称の知名度がそんなに高くない本件では、被告が長岡ないし「ながおか」の投票を正式の戸籍名で立候補している長岡博への投票とみたのを違法ということはできない。

(四) なお、〈証拠〉を総合すると、村選管は本件選挙の告示前である昭和五八年四月四日、東祖谷山村役場に立候補予定者を呼んで説明会を開き、原告も出席していたが、その説明中で、公選法施行令八八条、六項の通称使用申請が行われても選挙長が認定するのは、被告指摘の自治省選挙課長の昭和三九年一〇月二三日付各都道府県選管委員長あて通知(自治選第四九号)が指定している場合に限られること、右指定の場合に該当することを疎明する資料を添付すべきこと、通称使用が認定された者には認定書を交付することを説明したこと、原告は選挙告示日より二日前に訴外宮崎一を通じて長岡勝を通称として使う通称使用申請書を村選管に提出したが、原告の戸籍抄本を添付しただけで、右自治省通知の指定する場合にあたることの説明を行つたこともその疎明資料を提出したこともなかつたこと、したがつて選挙長は右通称使用を認定せず、原告の立候補届書の氏名(戸籍上の氏名)のとおり、村内八か所の掲示板に立候補者として吉岡勝と公示したこと、この公示につき原告から照会や異議、疑念はなく、原告もその選挙ポスターに戸籍上の氏名を記載したものを選挙運動に使つたことが認められ、他に右認定を動かすべき証拠はない。右認定事実によると、選挙長が原告の通称を認定しなかつたのは正当であり、他に右通称適用申請に関する選挙事務の処理に違法があつたことを認めるべき証拠はない。原告本人の供述によると、当時選挙長が通称使用を認定しなかつた旨を原告に通知しなかつたので原告は通称使用は受理されたと考えていたという部分があるが、村選管は説明会で通称使用を認定する場合はその旨の認定書を交付すると説明していたのであるから、認定書がなければ認定されなかつたことが判つたはずであり、原告自らポスター等に吉岡勝と書いていたことは通称使用の認められなかつたことを認識していたものと認めることができるので、原告の前記供述は採用できないし、村選管の措置に違法はない。

三よつて、原告の本件請求は理由がないのでこれを棄却することとし、訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法七条、民事訴訟法八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(菊地博 滝口功 渡邊貢)

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